解体工事が初めての方へ
それは日本の労働者の生産に対する主体性の噴出を感じさせて頼もしく、「改善」された労働がより密度の高いものになる事情も透視させてかなしい。
くわしくはこれを多方面から全面的に分析する別の著書(熊沢1993)に譲るけれども、やはり60年代後半に、大企業の製造現場にはじまったこのQC活動は、それ以降、中小企業やホワイトカラー部門にも拡がっていった。
支払われない労働時間にまでも及んでこの「改善」活動に取り組む、その暗黙の要請に適応することも日本的能力の一つであった。
4点セットの効用と限界以上の4点セットの確立によって、では、労働者の働き方と処遇は、実際のところ昭和40年代にどの程度変わっただろうか。
これはなかなかむつかしい問いである。
日本の労働者はこの「能力主義的平等」の新しいシステムのなかで、たしかに以前よりは、職務遂行能力の程度が稼得賃金の相対的な高低にかかわると感じるようになった。
「青空がみえる」ようになった。
「与えられた今の仕事だけができる」能力以上のフレキシブルな、たとえば技術革新に適応できる、工程の改善ができる能力の開発いかんでは、管理職に「出世」できると考えるようにもなった。
こうした仕事に対する意欲の一定の高まりがなければ、たとえばQC活動のまことに広汎なひろがりなどは理解できないだろう。
「モーレツ社員」という言葉もこのころにはじまっている。
けれども、総じて第1期は、高度経済成長と人不足の時代であった。
なんといっても人員整理がなく、配転を別にすれば深刻な雇用調整もまだ先のことだった。
「精鋭」も「ぱっとしない人」も必要なマンパワーとして雇用され、それなりにがんばっていれば、企業の拡大とともにふえ続ける管理職のポストにつく機会も現実に多かった。
賃金はといえば、『賃金センサス』の示すところ、20代前半を100とした40代の所定内給与指数は64年には238であったが、74年には191(1000人以上規模の男子)に下っている。
このかなりの低下は、若年労働市場の逼迫のもたらす初任給上昇の結果であるとともに、年齢給の後退・自動昇給制の終焉の反映であろう。
とはいうものの65年から75年にかけては、わずか10年で名目賃金が4.5倍化、実質賃金で1.8倍化している。
この時代における勤労者世帯全般にわたる消費革命の、それが基礎であった。
平均賃金でのこの達成には、賃上げではなお強靭であった労働組合の力も大いに寄与している。
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